守護神めぐり 東京一日参拝記― 五柱の神さまに会いに、五社を歩いた ―





はじめに
秋のある一日、八百万の杜でご紹介している守護神のうち五柱に会いに、 都内の五社を電車と徒歩でめぐりました。 朝の駒込から始めて、飯田橋、御茶ノ水、入谷、そして神谷町へ。 歩きどおしの一日で、最後は脚が棒のようになりました。
この日の順路
五柱の神さまに、会いにいく
押すと、その社の記録へ飛びます
- 一
駒込富士神社木花咲耶姫(文京区)― 小さな富士山を登って会いにいく - 二
東京大神宮天照大御神(千代田区)― 東京のお伊勢さま - 三
神田明神大国主命(千代田区)― VIVANTの木と、幻の別班饅頭 - 四
下谷 三島神社磐長姫(台東区)― 宮司さんが教えてくれた、もうひとつの名前 - 五
愛宕神社迦具土神(港区)― 86段の出世の石段
この順路には、ひとつの家族の物語が隠れています。朝に会う木花咲耶姫と、昼前に会う磐長姫は姉妹です。 そして三島神社の主祭神・大山祇命は、二柱の父にあたります。 妹は花のように美しく、姉は岩のように長く変わらない。そんな対照的な姉妹に、同じ日に会いにいく旅でもありました。

駒込富士神社
守護神 木花咲耶姫
駒込駅から本郷通りを南へ。駅からは思ったより歩きますが、通りから一本入っただけで、境内はすっと静かになりました。
ここは、富士山に見立てた塚「富士塚」の上に拝殿がある神社です。本殿へ上がる石段は急で、小さな山を登っている気分になります。

富士塚の、ひみつ
境内で目を引くのが、たくさんの石碑や石柱です。「富士 浅間神社」と彫られた社号碑の奥には、 赤い文字で「九合」と入った石がありました。
本物の富士山と同じように、登り道に一合目、二合目…と合目石が置かれているのです。 九合目は、頂上の一歩手前です。
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富士山の神、木花咲耶姫に、
小さな富士山を登って会いにいく。
一日の始まりにふさわしい場所でした。
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東京大神宮
守護神 天照大御神
駒込から南北線で飯田橋へ。駅からは、ゆるやかな上り坂が続きます。通りには「東京大神宮通り」の旗が並び、もうすぐだとわかります。
東京大神宮の、ひみつ
東京大神宮は、明治13年(1880年)に伊勢神宮の遥拝殿として創られた「東京のお伊勢さま」です。 はじめは日比谷にあり、名前も二度変わってきました。
- 明治13年(1880)伊勢神宮の遥拝殿として、日比谷に創建。「日比谷大神宮」
- 昭和3年(1928)関東大震災のあと、いまの飯田橋へ。「飯田橋大神宮」
- 戦後社名を「東京大神宮」に改め、いまに至る
平日の午前中でも、参拝者はひっきりなしに訪れていました。女性の姿が多く、人気の高さがうかがえます。

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印象に残ったのは、一人ひとりが手を合わせる時間の長さです。
何をお願いしているのでしょうか。
縁結びの神社として知られる場所なので、やはり良いご縁をでしょうか。
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神田明神
守護神 大国主命

飯田橋からJRで二駅、御茶ノ水駅の聖橋口へ。橋の上から見下ろす神田川には、オレンジ色の電車と地下鉄が交差するように走り込んできます。外国から来た人たちが、欄干に並んでスマホを構えていました。ここは今や、世界に知られた撮影スポットなのです。

坂をのぼり、鮮やかな随神門をくぐると、正面に御社殿。一之宮にお祀りされているのは、だいこく様こと大国主命(大己貴命)です。 江戸の総鎮守らしい、晴れやかな空気に包まれていました。
VIVANTの「あの木」の前で

神田明神は、ドラマ「VIVANT」のロケ地としても知られています。劇中、主人公の乃木が境内の小さな祠をのぞき、 そこに赤い饅頭が置かれていれば別班からの「呼び出し」の合図。その祠があったとされる大きな木の前に立つと、思わず根元をのぞき込んでしまいました。 今にも誰かがそっと饅頭を置いていきそうな、不思議な緊張感があります。
幻の「別班饅頭」

境内の文化交流館「EDOCCO」の売店には、サイン入りのパネルが飾られていました。そしてお目当ては、劇中の饅頭を再現した「別班饅頭」。
劇中の饅頭を再現
別班饅頭
9個入り 1,100円
続出

売り場には「完売」「次回入荷未定」の札。それでも、なんとかギリギリで手に入れることができました。


箱を開けると、真っ赤な饅頭が9つ。割ってみると、中にはぎっしりとあんこが詰まっていました。ドラマの世界を、ひと口で味わえる一品です。
VIVANTめぐりで訪れる人も多いのでしょう。境内には女性の参拝者の姿も目立ちました。帰りは裏参道へ抜けましたが、こちらは階段がきつめなので、ご注意を。

下谷 三島神社
守護神 磐長姫
末広町から銀座線と日比谷線を乗り継いで入谷へ。下町の街並みを歩いていくと、ビルのあいだに、いきなり朱色の小さな社が現れました。ぴかぴかの新しい社殿です。
三島神社は、弘安4年(1281年)、河野通有の発願で始まったと伝わる社です。それ以来、河野家の子孫が代々宮司を勤めています。 お祀りしているのは、大山祇命(山の神)、磐長姫命(岩の神)、木花開耶姫命(桜の神)。 朝に駒込で会った妹の木花咲耶姫と、姉の磐長姫、そして父の大山祇命。ここでようやく、家族がそろいました。
宮司さんが教えてくれたこと
幸運にも、宮司さんに直接お話を伺うことができました。
宮司さんのお話
- ◆ 磐長姫のもうひとつの名前:こちらでは、磐長姫命には別の名前があるそうです。 相殿に祀られる「上津姫命(雷神)」が磐長姫命、「下津姫命(龍神)」が木花開耶姫命にあたると考えられています。 岩の神が、この地では雷の神でもあるのです。
- ◆ 訪れる人:霊能者の方や、霊感の強い方がよく参拝に来られるそうです。 小さな境内なのに、拝殿の前に立つと空気がふっと引き締まる。その理由が少しわかる気がしました。
社殿の後ろに建つマンションの話

新しい社殿のすぐ後ろには、立派なマンションが建っています。これには、神社を未来へ残すための仕組みがありました。
社殿と土地の、これまでとこれから
- 昭和29年(1954)氏子の寄付で前の社殿が建つ
- 令和8年(2026)8月新しい社殿が完成。後ろ側は定期借地でマンションに
- 2099年借地の期限(約70年)
- その後マンションを取り壊し、土地はすべて境内に戻る
- ◆ 建て替えたわけ:前の社殿は、昭和29年(1954年)に氏子の皆さんの寄付で建てられたものでした。 しかし老朽化や白アリの被害に加え、耐火・耐震ではなかったため、大きな地震では倒壊や焼失のおそれがあったそうです。
- ◆ 土地は神社のまま:境内の後ろ側は、約70年の定期借地権でマンションに貸しています(契約上は2099年まで)。 土地は神社のもので、上の建物を使う権利だけを期限付きで渡しているのだそうです。
- ◆ 社殿を前に出した理由:宮司さんは、建物の空間の下に神様がいらっしゃるのはよくないので、 社殿を通りに面した前側に出したと話してくれました。新しい社殿は今年(2026年)の8月に完成したばかりです。
- ◆ 70年後の境内:期限が来ればマンションは取り壊され、土地はまたすべて神社の境内に戻ります。
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神楽坂の赤城神社、西新宿の成子天神社に続く、都心の神社のこれからの形。
土地を手放さずに、何百年も続く社を守っていく。
その覚悟が、この小さな新しい社殿には込められています。
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雷を閉じ込めた「雷井戸」
いただいたチラシには、こんな話が載っていました。
言い伝え
むかしこのあたりは雷がとても多かったため、神主が井戸に雷を閉じ込めました。 二度とこの地に雷を落とさないと約束させてから、許して井戸から出してあげたそうです。 それ以来、雷はこの地に落ちなくなったと言われています。

ここから生まれたのが、「落ちない」ご利益。それに因んだ「不落守」や「雷絵馬」も授与されています。 雷神としての磐長姫と、雷を閉じ込めた井戸。話が一本の糸でつながっていくようで、思わず鳥肌が立ちました。
チラシにはほかにも、むかしからこの地の地主神を祀る「火除稲荷社」や、樋口一葉『たけくらべ』の冒頭「三島神社の角をまがりてより」に 登場することも紹介されていました。「みしまさま」と呼ばれ、地元で長く親しまれてきた社なのです。

宮司さんからのお下がり

帰り際、宮司さんから「撤饌(てっせん)」をいただきました。撤饌とは、神前にお供えしたあとに下げた「お下がり」のこと。 神様の力が宿るものとされ、いただくことでご利益を分けてもらえると考えられています。
中身は、八角形の落雁と、青や緑の金平糖。そして「三島神社」の札がついた飴と、「福」の文字入りの飴。 落雁にも飴にも、角を切った八角形の中に「三」の字が入った神紋があしらわれています。落雁そのものが、神紋の形をしているのです。
これから参拝する方へ
- ◆ 「竣工奉祝祭」が、令和8年(2026年)11月1日(日)11時から予定されています。参加すると、新社務所の大広間の案内や、 特別限定の御朱印と撤饌のお渡しがあるそうです。事前申し込み制(10月25日締切・玉串料1万円〜)です。
- ◆ 磐長姫命の御朱印は、毎月1日だけの頒布です。
- ◆ 「元三島神社」(根岸・鶯谷駅前)は別の神社です。お間違えなく。

愛宕神社
守護神 迦具土神
入谷から日比谷線で一本、神谷町へ。虎ノ門ヒルズや愛宕グリーンヒルズに囲まれたビル街の真ん中に、こんもりとした小高い丘があります。その上にあるのが、愛宕神社です。
慶長8年(1603年)、徳川家康の命で防火の神として祀られました。主祭神は火産霊命(ほむすびのみこと)。迦具土神の別名で、火の神です。 いっしょに祀られているのは、水の神・罔象女命、山の神・大山祇命、そして日本武尊。火と水が並んで祀られているのは、火を鎮める神社らしいところです。 三島神社で会った大山祇命に、ここでもう一度会えました。
86段の「出世の石段」

出世の石段
86段
ここの名物は「出世の石段」。江戸時代、この急な石段を馬で駆け上がって将軍に梅を献上した武士がいて、 一日で名を上げたという話からそう呼ばれています。
実際に登ってみると、これが本当に急。一日歩きどおしの脚がどんどん重くなります。ここを馬で駆け上がったなんて、とても信じられません。 上から振り返ると、脚がすくむほどの角度でした。
ビル街の上の、静かな池

登りきった境内は、下のビル街がうそのような静けさ。見上げると、木々の向こうに超高層ビルがそびえています。外国からの参拝者の姿も目立ちました。
境内の池では、鯉がゆったりと泳いでいます。いつまでも見ていられる、癒やしの時間でした。昼から夕方は混みやすいと聞いていましたが、この日はそうでもありませんでした。
めぐり終えて
朝の駒込から、午後の愛宕山まで。富士塚の石段、飯田橋の坂道、神田明神の裏参道、そして最後に86段の出世の石段。 終わったころには、脚が棒のようになっていました。
でも、一日で五柱の神さまに会うと、神話が紙の上の話ではなくなります。朝に妹の木花咲耶姫、昼前に姉の磐長姫と父の大山祇命。 最後は、『古事記』では大山祇命と同じくイザナミから生まれた火の神・迦具土神の山の上で、もう一度大山祇命に。 通りを一本入るたびに、空気がすっと変わる。その瞬間を五回味わえる、ぜいたくな一日でした。
次に行きたい社
- ◆ 築土神社(千代田区九段北):主祭神はニニギノミコト。妹の木花咲耶姫を妻にし、 姉の磐長姫を送り返した神さまです。今回の姉妹の物語の、もうひとりの登場人物に会いにいきます。
- ◆ 武蔵一宮 氷川神社(さいたま市):須佐之男命を祀る、首都圏の氷川神社の本社。 半日かけて、長い参道を歩いてみたいと思います。
この日の写真
五社でめぐった、十八の景色
駒込富士神社の鳥居
富士浅間神社の石碑と九合目の石
東京大神宮の鳥居と石段
東京大神宮の拝殿
聖橋から見た神田川
神田明神の随神門
VIVANTの木
VIVANTのサイン入りパネル
完売の札
別班饅頭
別班饅頭の中身
三島神社の新しい社殿
通りから見た三島神社
菊の花の手水
宮司さんからの撤饌
愛宕神社の鳥居
出世の石段
境内から見上げる超高層ビル写真を押すと、大きく表示します
よくある疑問
Q. 五社を一日で回れますか?
A. 回れます。運営者は朝の駒込から始めて、午後に愛宕神社で終えました。ただ、富士塚の石段、飯田橋の坂、神田明神の裏参道、愛宕神社の86段と、上り下りが多い一日です。歩きやすい靴をおすすめします。
Q. 残りの守護神(須佐之男命・埴安姫・金山彦・瀬織津姫・久久能智神)には、東京で会えますか?
A. 須佐之男命は、さいたま市大宮区の武蔵一宮 氷川神社が首都圏の氷川神社の本社です。金山彦は川崎の若宮八幡宮境内の金山神社、瀬織津姫は多摩市の小野神社、埴安姫(埴山姫命)は千葉県成田市の埴生神社がお祀りしています。久久能智神は、東京の近くで主にお祀りしている社を確かめられませんでした。
Q. 赤坂の日枝神社(山王さん)は、木花咲耶姫のお父さんの神社ですか?
A. いいえ。日枝神社の主祭神は大山咋神で、木花咲耶姫の父の大山祇神とは別の神さまです。名前がよく似ているので、別の記事で違いをまとめています。
あなたの守護神は、どの一柱?
お名前の画数から、十柱の中のあなたの守護神をお伝えします。
会いにいく社を決める前に、どうぞ。
参考にした資料
- ◆三島神社でいただいたチラシ、境内の「ご奉賛(ご寄付)のお願い」の掲示、宮司さんのお話(運営者が参拝時に見聞きしたこと)
- ◆三島神社(台東区下谷)公式サイト(所在地、最寄り駅、御祭神)
- ◆三島神社(台東区下谷)「磐長姫命御朱印」(磐長姫命の御朱印)
- ◆三島神社 (台東区) ― Wikipedia
- ◆三井不動産レジデンシャル「パークホームズ入谷」竣工のお知らせ(社殿の後ろのマンション)
- ◆成子天神社とエムズポート(All About)
- ◆文京区「富士神社」(所在地と最寄り駅)
- ◆千代田区観光協会「東京大神宮」(明治13年の創建)
- ◆神田明神「神田明神とは」(一之宮 大己貴命)
- ◆サライ.jp「愛宕神社」(1603年の創建、主祭神、出世の石段86段)
- ◆VIVANTロケ地巡礼|神田明神(個人ブログ)
- ◆「VIVANT」聖地巡礼①神田明神(note)
